バイデン政権関係者がジェンダー移行手術の年齢制限撤廃を推進したことが文書で明らかに
アジーン・ゴライシ記者 2024年6月25日
トランスジェンダーの医療ガイドラインを発行する影響力のある団体から新たに公開された電子メールによると、米国の保健当局は政治的影響を懸念して未成年者の手術の最低年齢を撤廃するようロビー活動を行っていたという。
保健福祉省の次官であるレイチェル・レヴィン大将のスタッフは、世界トランスジェンダーヘルス専門家協会(WPATH)に対し、同団体のガイドラインから年齢制限案を削除するよう要請した。
法廷で新たに開示された文書によって、バイデン政権の保健当局は、医療専門家の国際グループに対し、未成年のトランスジェンダーのケアのガイドラインから思春期の子供の移行手術にある年齢制限を削除するよう圧力をかけていたことが明らかになった。
当局は、年齢制限がこのような治療法(ジェンダー移行手術)に対する政治的反対の高まりを助長するのではないかと懸念していた。
次官であり、自身もトランスジェンダー女性であるレイチェル・レヴィン大将のスタッフが、同協会(WPATH)のガイドラインにあった年齢制限を削除するよう促し、それが成功した様子が記録されている。
政界では、今、十代の若者がジェンダー移行のための投薬や手術を受けることが認められるべきかどうか、またどの年齢になれば認められるべきかについて、激しく議論されている。反対派は、十代の若者はそのような(ジェンダー移行医療を受ける)決断を下すには若すぎると主張するが、医療専門家を含む支持派は、ジェンダー違和(性別違和)を抱える若者は、問題が放置されれば、うつ病や苦痛の悪化に直面すると主張している。
米国では、(ジェンダー移行医療に)年齢制限を設けることは当初から議論の的となっていた。
2021年後半に発表された(WPATHの)ガイドライン草案では、ホルモン治療については最低年齢を14歳に、乳房切除については15歳に、豊胸手術や顔面手術については16歳に、性器手術や子宮摘出については17歳に引き下げることが推奨されている。
提案されていた年齢制限は、ケア基準を概説した最終版のガイドラインでは削除され、WPATH内外の専門家の間では、なぜ年齢の提案が消えたのかという懸念が高まった。
今週公開された電子メールの抜粋は、WPATHのガイドライン変更の理由や、バイデン政権におけるトランスジェンダー関連問題のトップ担当者としてレヴィン大将の役割が大きいことを明らかにした。(著作権の都合により一部省略)
このWPATHのガイドライン作成グループの匿名会員からの抜粋は、当時レヴィン大将のチーフスタッフを務めていたサラ・ボアテングとの会話を回想したものである:
「彼女(レヴィン大将)は、ワシントンD.C.や、実際に私達が見たレトリックによって、18歳未満という特定の年齢が記載されることが、トランスケアにとって壊滅的な法律が制定されることにつながると確信しています。(レヴィン大将)は、年齢要件を削除できないかと考えています」
また、別のメールにはこう書かれていた:
「レヴィン大将は年齢を記載すると(主に手術の場合)、若年層のみならず、おそらく成人のトランスジェンダーの医療へのアクセスに影響が出るのではないかと非常に懸念しています。米国の状況はひどくなっており、彼女(レヴィン大将)とバイデン政権は文書に年齢を記載すると事態がさらに悪化するのではないかと心配していました。彼女(レヴィン大将)は私たちに年齢を削除するよう依頼してきました」
この抜粋は、心理学者であり、長年にわたり未成年者に対するジェンダー医療の在り方を批判してきたジェームズ・カンター博士によって提出されたもので、同氏はこれを、WPATHという国際的な影響力を持つグループが、ガイドラインの作成にあたり科学ではなく政治に基づいて決定を下していた証拠として提出したのだ。
このメールは、アラバマ州が未成年者へのトランスジェンダー医療を禁止する法案を支持するためにカンター博士が提出した報告書の一部である。レヴィン大将のスタッフからのメールは公開されておらず、また、原告らは、カンター博士には専門知識がなく、意見は的外れだと主張し、この訴訟で証言することを禁じようとしている。
(著作権の都合により一部省略)
カンター博士は、この訴訟で召喚状によって入手されたWPATHの内部メールの内容を暴露するために報告書を提出したと述べた。それらのメールのほとんどは保護命令により封印されたままである。「公に語られている内容は、WPATHが非公開で行っている議論とは全く異なる」と同博士は述べた。
婦人科・再建外科医(reconstructive surgeon)であり、WPATH会長であるマーシー・バワーズ医師は、この(カンター博士の)主張を否定し、「それは政治的なのではなく、政治であることはすでに明らかだったのです」「WPATHは決定を下す際に政治を考慮することはありません。」と述べ、最終ガイドラインからの年齢制限の削除が政治的な判断ではないと主張した。
今週公開された別の電子メールでは、WPATHのメンバーの一部が変更に反対を表明している。「もし私たちの懸念が法律に関するものであるなら(そうあるべきではないがー倫理的に考えるなら、科学と専門家の合意に基づくべきだ)、年齢を含めることは役に立つのではないだろうか?」「年齢を省くことが保守派の反トランスジェンダーとの戦いにどのように役立つのか、説明してもらいたい」と、あるWPATHの会員は書いている。
WPATHは最終的に、2022年9月に発表された第8版のケア基準(SOC8)で年齢制限を削除した。このガイドラインは10年ぶりの更新を反映しており、トランスジェンダーの若者の医療に関する専用の章が含まれた最初のバージョンとなった。
思春期の若者のジェンダー移行ケアの分野は比較的新しいため、長期的な結果に関するエビデンスは乏しい。米国で医療介入を受けるトランスジェンダーの若者の大半は、手術ではなく、二次性徴抑制剤(思春期ブロッカー)やホルモン剤を処方されている。
しかし、こうした治療を求める若者の数が急増するにつれ、世界中の著名な臨床医の間で、医療介入の理想的な時期や基準などの問題について意見が分かれるようになった。
ヨーロッパ諸国では、科学的証拠を検討した結果、手術を受けられるのは18歳以上の患者のみである。
(著作権の都合で一部省略)
この電子メール文書は、アラバマ州中部地区連邦地方裁判所によって公開されたもので、全米レズビアン権利センターや南部貧困法律センターなどの公民権団体が、5人のトランスジェンダーの若者とその家族に代わり、アラバマ州の禁止令に異議を申し立てた訴訟の中で提出されたものである。
トランスジェンダーの権利団体は、2021年以降、アラバマ州のような(未成年に対するジェンダー肯定医療を禁止する)法律を阻止するために裁判所に訴えたが、共和党が優勢な20州以上で承認されており、裁判所の判決は分かれている。
月曜日、最高裁判所はテネシー州の青少年ジェンダー医療禁止法に対する異議申し立てを審理すると発表した。テネシー州の青少年ジェンダー医療禁止法では、二次性徴抑制剤(思春期ブロッカー)、ホルモン剤、手術など、未成年者に対するジェンダー肯定医療を医師が行うことは重罪とされる。米国司法省が提出したこの請願書では、主要な「ジェンダー違和の治療に関するエビデンスに基づく診療ガイドライン」としてWPATHのガイドラインが挙げられている。
新たな裁判所の書類で引用された電子メールは、米国小児科学会(AAP:American Academy of Pediatrics)も、WPATHがガイドラインに新たな年齢制限を設定する場合、WPATHの勧告を支持しないとWPATHに対して警告していたことを示唆している。
米国小児科学会(AAP)のマーク・デルモンテ最高責任者は火曜日に声明を出し、米国の小児科医6万7000人を代表するAAPは、すでに独自のガイドラインを制定しているため、(WPATHの)国際ガイドラインを承認していないと指摘した。AAPの方針では年齢に基づく手術制限を推奨していないことから、WPATHのガイドラインの年齢制限に対し、変更を求めていた。
(著作権の都合により一部省略)
未成年者に対するジェンダー移行手術は政治的な争点になっている。フロリダ州のロン・デサンティス共和党知事は、外科医は子供の「外見を損ねた」として訴えられるべきだと主張している。また、テキサス州では、トランスジェンダーの子供の親が児童虐待の疑いで捜査されており、共和党のグレッグ・アボット知事が、思春期の子供に対する性器手術を「性器切除」と呼んでいる。
WPATHの最終ガイドラインは、特に乳房の発達に関する悩みは、トランスジェンダーの10代の若者のうつ病、不安、悩みの発生率の高さと関連しているとし、「思春期に開始されたジェンダー肯定医療の長期的な影響は完全には分かっていないが、治療を遅らせることで健康に悪影響が出る可能性も考慮する必要がある」と書かれている。
(著作権の都合により一部省略)