ジェンダー医療研究会:JEGMA

ジェンダー医療研究会は、 ジェンダー肯定医療に関して、エビデンスに基づいた情報を発信します。

ジェンダー医療研究会

当会は海外医療論文の翻訳を行うことで、
ジェンダー違和(性別違和:gender dysphoria) を持つ
主に未成年者に対する、
安全で、思いやりがあり、倫理的で、
エビデンスに基づいた医療の推進を目指しています。

🔺警戒、そして、より良い研究の必要性。

医学の歴史には、善意によって短期的な症状の緩和を追求した結果、長期的に見れば破滅的な結果を招いてしまった例が数多くあります。例えば、過去のサリドマイドの使用やロボトミー手術、最近で言えばオピオイドの蔓延などです。
「ジェンダー肯定」モデルは、若者達を生涯にわたる医学的治療に委ねる一方で、その症状の病因や、ジェンダー違和(GD)の原因となる心理社会的要因には最小限の注意しか払いません。このモデルは、心理療法がジェンダー違和の緩和や解消に役立つかという疑問を退け、十分な検証もせずに医学的介入を行っています。
私たちは臨床医と研究者に対し、若者を対象としたこのような規制なき実験を中止し、ジェンダー違和の病因や様々な介入の利益と害について実用的なエビデンスを提供する、支持的な研究の枠組みに置き換えるよう求めています。SEGMより抜粋)

segm.org

WPATHファイル:消費者主導のジェンダー医療/リスクの軽減よりも患者の自律性を重視 - p.49~50

消費者主導のジェンダー医療
 近年、「ノンバイナリー」を自認する若者の数が大幅に増加しています。 WPATHは現在、これらの人々も、ホルモンや手術による性的特性変更処置を受けられるよう支援しています(211)。

 WPATHのSOC8のノンバイナリーの章では、「自己肯定と医療を受けることで生まれる、快適さ、喜び、自己実現を考慮することも重要である」ため、医療従事者はジェンダーに関連した苦痛に過度に焦点を当てないようにするべきだと述べています(212)。

 WPATHが「バイナリーな外観を排除する処置」と定義するナリフィケーション手術(nullificaton surgeries)や、陰茎を切断せずに疑似膣腔を作るなどのバイジェニタル手術(bi-genital surgeries: 両性器手術)は、活動家がWPATHを侵略した最終結果といえます。 

 WPATHのSOC8には、「陰茎および/または睾丸を保持する」膣形成術や「フラットフロント」手術などのオプションを含む極端な身体改造のショッピングリストがあります(213)。これらの手術は、管理された方法で研究されていないため、実験的医療とさえ言えません。 

 WPATHメッセージフォーラム内のメンバーは、これらの「ノンスタンダード(非標準)」手順のベストプラクティス(最良の実践)について議論します。

 カリフォルニアの著名な外科医であるトーマス・サターホワイト博士が、「乳首なしのトップ手術、ナリフィケーション、陰茎温存膣形成術」などの「ノンスタンダード」手術について、グループの意見を求めたところ、特殊な肉体改造の欲求のために完全に健康な生殖器官を破壊することについて、誰も倫理的な疑問を提起しませんでした。グループのメンバーがしたのはサターホワイト氏の言葉遣いを注意するだけで、あるセラピストはそのような処置は「バイナリーな人々にも選択されうる」と主張し、ノンバイナリー自認の別のセラピストは同意し彼の言葉遣いを「シスジェンダー主義」と呼び、トランスジェンダー自認で生得的女性の医学部生は、性的特性変更処置を「脱ジェンダー化」することの重要性を強調しました。SOC8では、これらの手術は婉曲的に「個別にカスタマイズされた」手術と呼ばれています。

 WPATHがラディカルかつ未検証な手術を優先していることを示すシーンは他にもあります。Rajveer S. Purohit医師は、ナリフィケーション手術の前に患者と話し合うべき重要なトピックを概説し、オーガズムを望んでいるかどうか、排尿中に座りたいかどうかなどを挙げました。しかしその議論のなかでは、このような極端な処置が患者の生殖能力、性機能、長期的で安定した恋愛関係を形成する能力、または全般的な健康状態に及ぼす影響についての言及は一切ありませんでした。

 ある投稿で、サターホワイトはある患者とのいざこざを報告しています。その患者は手術後のケア中に「危険で脅迫的」になり、その原因を「術後まで表面化しなかった未診断の気分障害」としています。これは、事前の心理的評価または心理療法的サポートなしに、要求に応じて極端な肉体改造手術を行うことが、すべての患者にとって利益となるわけではないことを証明しています。

 

リスクの軽減よりも患者の自律性を重視

WPATHは、患者の自律性に高い価値を置き、潜在的な危害を最小限に抑えることに低い価値を置きます。「危害を加えない」というヒポクラテスの誓いにおける「危害」を、「満たされない消費者の欲求」として、概念化しているのです。

 2022年、発達に遅れのある未成年者が人生を変える実験的なホルモンや手術に同意することを許されるべきだと考える前述の活動家の教授は、「乳首のない乳房切除術、エストロゲンによる乳房を望まない人のための乳房切除術、膣温存陰茎形成術」など、「身体性の目標が社会の支配的な期待と違うトランスジェンダーの人々」を擁護する意見をフォーラムに投稿しました。

 その教授は以前、「トランスジェンダーの身体化はジェンダーの自由な芸術的表現である」と述べており、10代の若者は自分の体を「ジェンダー化された芸術作品」のように扱う権利を持つべきだと意見を表明していましたが(214)、この時もトランスジェンダー医療の目標は「シスジェンダー規範に挑戦する」肉体を創り出すことであると主張しており、WPATHの誤った信念をはっきりと示しています。

 「トランスジェンダーの健康は、身体の自律性に関するものであり、身体を正常化するものではありません」と、活動家の教授はファイルの中で述べています。「私たちはジェンダーはバイナリーであり性器によって定義されるという思想を強化するためだけに、ジェンダーを変えることはできないという思想を否定したわけではありません」。

 「ノンスタンダード」手術に関する別の議論で、WPATHには「シスジェンダー主義者の視線を通さない、ジェンダーに対する別の見方」が必要だと信じているミネソタ州のセラピストは、次のように他のメンバーに尋ねました。「成人の患者に身体の自律性があるのなら、例えば乳首のないトップ手術(両側乳房切除術)の何が問題なのでしょうか?」更には「サージカル・タトゥー(外科的な痕跡)は、患者が後で気が変わった場合に役立つ可能性があるのです」と付け加えました。

 これらのコメントは、WPATHが科学的ではないことを明確に示しています。患者に倫理的なケアを提供する医療専門家は、滑らかでセックスレスな体や第2の生殖器を作るために、健康な生殖器官を破壊するべきではありません。このような侵襲性が高く、人生を変えるような処置は、精神医学的症状に対する治療を目的としたものではありません。それは 医療に見せかけた消費者主導の極端な肉体改造です。これは医療倫理とヒポクラテスの誓いに違反しています。

211) Chew, D., Tollit, M. A., Poulakis, Z., Zwickl, S., Cheung, A. S., & Pang, Sociodemographic and Clinical Profile.” The Lancet Child & Adolescent article/PIIS2352-4642(19)30403-1/fulltext.

212) Ibid (n.94)

213) Coleman, E., Radix, A. E., Bouman, W. P., Brown, G. R., de Vries, A. L. C., Deutsch, M. B., Ettner, E., et al. “Standards of Care for the Health of Transgender and Gender Diverse People, Version 8.” [In eng]. Int J Transgend Health 23, no. Suppl 1 (2022): Ch. 13. https://doi.org/10.1080/26895269.2022.2100644.

214)  Ashley, F. “Gatekeeping Hormone Replacement Therapy for Transgender Patients Is Dehumanising.” [In eng]. J Med Ethics 45, no. 7 (Jul 2019): 480-82. https://doi.org/10.1136/medethics-2018-105293.

著作権 Environmental Progress

連絡先

・米国内のメディアからのお問い合わせ:press@jdaworldwide.com
・米国外のメディアからのお問い合わせ: press@sex-matters.org
・著作者:The WPATH Files — Environmental Progress

翻訳PDF集