利害関係者の関与
1.40 正式な定性調査に加えて、レビューは広範な積極的関与のプログラムによって支えられてきました。
1.41 支援団体および擁護団体は、レビューの中心にいる若者の意見を聞くためには、彼らが安全だと感じ、参加前、参加中、参加後にサポートを受けられること、そして彼らが情報を提供することで決定に影響を与えられるようなトピックに関与できる機会を作ることが必要であると助言してくれました。
1.42 主題の繊細さと激しい公での議論が相まって、この種のレビューを実施する際に採用される通常の方法のいくつかは適切ではありませんでした。実際、レビューの大きな課題の1つは、異なる意見を持つ人々が同じ部屋や同じステージに一緒に座ることに不快感を覚える可能性があるため、オープンで率直な議論を行うことが難しいことでした。人々が貢献する機会を注意深くナビゲートし、十分に計画する必要があることは明らかでした。
1.43 混合手法を採用し、次の2つのカテゴリーの利害関係者を優先しました。
- 関連する実体験を持つ人々 (直接または親/養育者として) 、およびLGBTQ+の子供や若者全般と連携している組織。
- 専門的なジェンダーサービス内外で子供や若者にケアとサポートを提供する責任を持つ臨床医およびその他の関連する専門家。
1.44 全体として、レビューでは1,000人以上の個人と面談しました。1対1の面談もあれば、特定のトピックに関する特別な面談や、関心のある関係者や組織の間で問題に対する認識を高め、理解を深めることに重点を置いた面談もありました。
以下は、採用された構造化されたプロセスの概要です。
フォーカス・グループ
設定された質問を検討する小グループディスカッションで洞察、考え、フィードバックを収集。一部のグループはレビューによって主導され、一部は外部組織によって促進された。
リスニング・セッション
議長とレビューチームが、半構造化された1対1のプロセスでスタッフ、臨床医、専門家、若者、保護者から直接話を聞く機会。
臨床ワークショップ
参加者が特定のトピック領域に関する思考を促進するために貢献し、サービスモデルなどのまだ定まっていない推奨事項の領域を共同で作成するテーマ別ディスカッション。
円卓会議
提示されたエビデンスと新たな考えに基づいて、レビューの特定の質問または側面をより深く検討するための議論を促進。可能な場合はコンセンサス(意見の一致)を得る。
調査
特定の質問について、対象ユーザーから洞察、考え、フィードバックを収集。
定期的な関係者会議
レビューの期間中、特定の組織や対象者との会議を開催し、関係者に進捗状況を知らせ、新たな考え方に対する人々の考えを理解。
実体験の関与
個人の語り
1.45 作業の初期段階で、チームは類似のレビューや調査を実施した個人と面会し、影響を受けた人々の意見を確実に把握するために彼らが何をしたかを知りました。証拠を公に求めることのメリットが検討されましたが、正式な公的調査とは異なり、提供される情報には法的地位はありません。提出された情報を分析し、その信憑性を検証するための正式なプロセスや資格がないままに、レビューが期待を高め、効果的に処理できない大量の機密性の高い情報を収集するリスクを負っていることが認められました。
1.46 しかし、レビューには、ジェンダー医療サービスやジェンダーアイデンティティの探求に関する個人の体験を記述した書面による意見が多数寄せられました。これらの提出物を分析するための正式なプロセスはありませんでしたが、レビューでは提出物がすべて読み込まれ、提起された問題が他の情報源から聞いた内容と一致しているか、または新しく関連性があるかが判断されました。後者の場合、その人はリスニング・セッションに出席するよう招待されました。
リスニング・セッション (実体験と専門家)
1.47 レビューの委員長は毎週リスニング・セッションを開催し、レビューに関連する主な実体験 (トランスジェンダー、ノンバイナリー、ジェンダーフルイドであると自認する個人、および/またはジェンダーに疑問を抱いていた時期を経験した個人)または二次的な実体験 (ジェンダーに疑問を抱いている子供や若者の親/養育者、またはこれらの子供や若者と直接かつ関連する業務に携わった経験を持つ臨床医またはその他の専門家)を持つ人々から直接話を聞きました。これらの機密セッションは、サービスが現在どのように体験されているかについて、レビューに貴重な洞察をもたらしました。これらのセッションは、トランスジェンダーやジェンダーの多様な人として生きることの肯定的な経験だけでなく、子供、若者、およびその家族/養育者が直面する不確実性、複雑さ、課題についてもレビューが理解するのに役立ちました。
フォーカス・グループ (実体験)
1.48 2022年秋、レビューチームは、提案されたデータリンケージ(結合)研究について特に議論するために、一連のフォーカス・グループを主催しました。研究のためにデータにアクセスする人々の年齢と、セッションが研究の範囲外の人々から関心を引く可能性があるという懸念のため、セッションへの参加を公に募ることは不適切であると判断されました。代わりに、フォーカス・グループは、GIDSの利害関係者グループ、関連するNHS資金提供サービス、および支援団体や擁護団体を通じて宣伝されました。これにより、チームの参加者募集能力は制限されましたが、セッションが安全で保護された環境で実施されることが保証されました。
1.49 これまでの募集の難しさを振り返り、それに対応するため、レビューでは、2023 年春に、6 つの支援団体および擁護団体に委託し (関心表明プロセスを通じて)、実体験を持つ若者と成人 (14~30 歳) の考えやアイデアをより深く理解するための18のフォーカス・グループを運営しました。委託された団体は対象者にアクセスでき、参加者が安心して自信を持って自由に発言できる支援環境を提供できたため、このアプローチが採用されました。
*訳注:関心表明[書](Expression of Interest: EOI)…企業や団体が公募プロジェクトなどの検討に名乗りをあげること、またはそのために提出する書類のこと。
1.50 レビューでは、グループで使用する3つの質問セットを作成しました。これらの質問では、次の点について調査しました。
- 評価、診断、臨床医への期待など、過去および現在のサービス経験。
- 場所、環境、サポート、およびアクセスしたい治療など、将来のサービスに関する考えとアイデア。
- 情報ニーズとより幅広いサポート。
概要レポートを参照
支援団体および擁護団体との定期的な会議
1.51 レビューでは、ジェンダーに疑問を持つ若者の支援が主な機能または仕事の重要な要素である支援団体および擁護団体と定期的に会議を行いました。各組織と個別に会議を開催し、オープンで率直な会話を促進しました。この双方向のコミュニケーションにより、レビューでは、サービス利用者がどのようにサービスやポリシーの変更を経験しているかをより深く理解でき、またこれらの組織はレビューの作業についてより深く理解することができました。
臨床および専門家の関与
1.52 このレビューは、リスニング・セッション、グループイベント、ワークショップ(提案された将来のサービスモデルに関する考え方をテストするなど)など、さまざまな形式で、高いレベルの臨床的意見を受け取りました。会議やトレーニングセッションでさまざまな専門家グループとプレゼンテーションや議論を行うことは、このレビューと臨床ケアをめぐるジレンマに対する認識が高まることに役立ちました。
重要なことは、これにより、はるかに幅広い臨床医が質問し、経験を共有し、判断に貢献する機会が生まれたことです。また、関連する王立大学や専門機関の長との定期的な会議も開催されました。
臨床専門家グループ
1.53 このレビューの研究プログラムから得られたエビデンスと調査結果の強度を検討し、またエビデンスが入手できないか限られている場合に臨床コンセンサスを達成できるようレビューを支援するために、臨床専門家グループが設立されました。メンバーには、ジェンダー、発達、心身の健康、安全防護対策、内分泌学に関する子供と青少年の臨床専門家が含まれていました。
テーマ別の円卓会議
1.54 さまざまな関連トピックの専門家による円卓会議が開催され、特定の質問をさらに深く検討しました。
円卓会議では以下の内容について議論が行われました:
- メンタルヘルス、精神・性的発達、ジェンダー関連の苦痛の交差
- 安全防護対策
- 労働力
- 実体験からの学習
1.55 これらの議論は、このレポート全体に反映されています。
専門の有識者とジェンダー専門家の調査
1.56 2021年秋、専門のジェンダー発達サービス以外の労働力の課題を理解し、能力、キャパシティ、自信の状況を把握するために、オンラインの専門家委員会が設立され、子供と若者向けのジェンダーアイデンティティサービスに関する問題を調査しました。委員会は、6 週間にわたって毎週、個人またはグループで活動しました。
概要レポートを参照
1.57 専門家委員会の終了後、レビューはジェンダー専門家(ジェンダーアイデンティティに関するサポートを必要とする子供や若者を主に、または専ら対象にしている臨床医および関連専門家)を対象にオンライン調査を実施しました。調査にはサービス固有の質問がいくつか含まれていましたが、レビューがリスニング・セッションを通じて専門家から聞いた内容や、専門家委員会の活動に携わった一次および二次医療の専門家から聞いた内容の一部を反映し、検証しようとしました。
概要レポートを参照
1.58 これらの活動から得られた結果は中間レポート(4.29-4.39)で報告され、引き続き私たちの活動に役立っています。
ジェンダー専門家との関わり
1.59 これらの子供や若者と関わる臨床経験の多くは、GIDSで働いた経験のあるスタッフの間に存在します。
1.60 レビューの初期段階から、チームはGIDSの臨床および管理のリーダーとの2週間ごとの会議を設定し、率直な会話を交わし、課題やアイデアを議論する場を提供しました。
1.61 このレビューは、GIDSの洞察、知識、経験をさまざまな方法で活用しました。上級臨床スタッフがレビューが主催するワークショップに参加し、GIDSの上級臨床医2名がレビューの臨床専門家グループに参加しました。
1.62 ジェンダー専門家の調査に加えて、多くのGIDS臨床医(現職および元職の両方)が1対1のリスニング・セッションで経験と考えを共有し、彼らの洞察は、新しいアプローチを開発する際の課題とチャンスを理解する上で貴重なものでした。
1.63 後期段階では、レビューはGIDSスタッフとのフォーカス・グループを主催し、いくつかの重要な領域に関する新たな考え方をテストおよび開発しました。
i. 労働力とトレーニング
ii. ケアパッケージ
iii. 医療経路とより広範なシステムの運用
1.64 このレビューでは、他の国でジェンダー医療サービスに従事する臨床医とも連携しています。
要約
1.65 子供や若者のケアに関するエビデンス基盤の強さや弱さは、科学的な出版物でも社会的議論でも、しばしば誤って伝えられ、誇張されています。エビデンスを体系的にレビューし評価することが、レビューのアプローチの基本となっています。
1.66 このレビューの中心にいる子供や若者、その親/養育者、そして彼らをサポートしようとしているサービスの内外で働いている臨床医から直接話を聞くことで、サービスが現在どのように提供され、経験されているかについて貴重な洞察が得られました。これは、トランスジェンダーまたはジェンダーの多様な人として生きることの肯定的な経験だけでなく、直面する不確実性、複雑さ、困難についてもレビューが理解するのに計り知れないほど貢献しました。
1.67 これらのさまざまな活動から洞察をまとめることは簡単ではありませんでした。明確な合意が得られていない分野もあり、見解が極端に分かれている場合、妥協点を見つけることは不可能です。
1.68 時には、サービス利用者、その家族や支援者と、NHSが提供できるサービスとの間に期待の不一致が生じることがあります。そのような場合、レビューではNHSの通常の慣行について検討し、この集団向けのサービスが異なる対応や運営を行う妥当かつ合理的な理由があるかどうかを検討する必要がありました。
1.69 このレポートでは、レビューの過程で何がわかったかを説明し、今後サービスがどのように運営される必要があるかについてアドバイスを提供します。各検討分野の根拠となるエビデンス基盤の概要が提示され、可能な場合は対応する論文へのリンクが提示されます。
著者権
Cass Review
Independent Review of Gender Identity Services for Children and Young People
cass.review@nhs.net
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