ジェンダー医療研究会:JEGMA

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スウェーデンのカロリンスカ病院は、臨床研究以外の未成年者に対する思春期ブロッカー(二次性徴抑制剤)と異性化ホルモンの使用をすべて終了する

医療被害への懸念と不確実な利益が、政策の大きな転換をもたらす

2021年05月08日更新: カロリンスカ病院からの新しい方針声明が2021年5月に施行されたことを受け、この記事は変更を反映して更新された。

2022年2月更新:スウェーデンの国立保健福祉委員会は、カロリンスカ病院に続き、カロリンスカ病院が採用した方針を忠実に反映した国内方針の更新を発表しました。ジェンダー違和の未成年者に対するホルモン介入に関するスウェーデンの新しい方針については、こちらを参照。

スウェーデンのカロリンスカ病院は、ジェンダー違和の未成年者の治療に関しての新方針を発表した。この方針はカロリンスカの小児ジェンダーサービスであるアストリッド・リンドグレーン小児病院(ALB)に影響を与え、18歳未満のジェンダー違和患者に思春期ブロッカー(二次性徴抑制剤)と異性化ホルモンを処方する行為を終了させたものである。

これは、世界有数の病院が「オランダ・プロトコル(Dutch Protocol)」を実験的なものと位置づけ、研究以外の場での日常的な使用を中止するという、画期的な出来事である。「オランダ・プロトコル」は、ジェンダー違和の未成年者に対して、12歳(タナーステージ2と解釈されるときもあり、女児の場合は8歳となることもある)で思春期ブロッカー(二次性徴抑制剤)、16歳で異性化ホルモンを投与するもので、近年、広く普及している。この方法は、医学的「肯定」とも呼ばれ、WPATHのガイドライン「標準治療第7版:Standards of Care 7」に依拠している。

2021年5月に施行されたカロリンスカの最新の指針によると、今後、ジェンダー違和の未成年者に対するホルモン(二次性徴抑制&異性化ホルモン)介入は、スウェーデンの倫理審査委員会が承認した研究環境においてのみ提供することができるとしている。この方針では、患者が意味のあるインフォームドコンセントを提供できるか否かを判断するために、患者の成熟度を慎重に評価する必要があるとしている。また、この治療経路のリスクと不確実性について、患者と保護者に十分な情報開示を行うことが要求されている。また、16歳未満の未成年者がこのような臨床試験の対象となるか否かは、不明である。

カロリンスカ病院の新しい方針は、医療上の害をもたらす可能性が大きい一方で、有益性の確実性が低い医療介入が普及していることに対する国際的な懸念の高まりを反映したものである。カロリンスカが発表した最新の方針では、2019年にスウェーデンが独自に実施した医療技術評価(SBU)エビデンスレビューにおいて医療行為のエビデンスが不足しており、また近年、ジェンダー違和を訴える思春期の若者の人数が急増していることについて説明も不十分であることを明らかになったことを引用すると同時に、未成年者に対するホルモン介入のリスク/ベネフィット比が極めて不確実であるとした英国NICEの調査報告書や、未成年者に対する医療的「肯定」の実践に関する包括的な倫理的問題を強調した2020年の英国の司法審査も引用されている。

ここ数カ月、複数の国の保健当局が、ジェンダー違和の未成年者へのルーティン化している早期医学的介入を正当化するには、根拠に基づいたエビデンスが不十分であると結論づけている。

フィンランドは2020年6月に治療ガイドラインを改訂し、特に思春期以降にジェンダー違和を発症した若者(現在最も多い症状)に対して、医学的介入よりも心理的介入とサポートを優先させた。

また、英国でも大きな変化が起きている。2020年の高等裁判所の判決を受け、NHS(国民保健サービス)は16歳未満の未成年者へのホルモン介入の開始を停止。この判決は現在控訴中であり、2021年6月に審理が予定されている。

北米では、ジェンダー違和の未成年者の治療に関する議論が非常に政治的になっている。米国の多くの州では最近、ジェンダー違和の未成年者に対するホルモン介入の使用を禁止する法律が導入された。一方、他の州では、患者の年齢や精神状態のいかんにかかわらず、「ジェンダー不合(gender incongruence)」に対する幅広い「ジェンダー肯定(gender-affirming)」の医療・外科的介入に対して公的・民間の保険適用を義務付ける法律を導入している。カナダでは、法案C-6はさらに進んで、医学的・外科的「肯定」に代わる主要な非侵襲的代替療法(non-invasive alternative)である心理療法を犯罪化しようとしている。

ジェンダー違和の未成年者に対する「肯定的」医療介入の利点に関するエビデンスの質が低く、潜在的な害があるという認識が世界的に高まるにつれ、倫理的な心理的治療や支援の提供など、未成年者の苦痛を改善するための非侵襲的な代替手段が注目されるようになると予想される。

SEGMがカロリンスカ病院から入手した3月(4月1日施行)と4月(5月1日施行)の方針書と、当社の非公式翻訳を以下に掲載。

 

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