ジェンダー医療研究会:JEGMA

ジェンダー医療研究会は、 ジェンダー肯定医療に関して、エビデンスに基づいた情報を発信します。

WPATHファイルと The Cass Review の比較


WPATHFiles(ダブリューパスの記録)とThe Cass Review (キャス博士の報告書)は同時期に出て、主張も似ているのですが、性格が大きく異なっています。そのポイントをまとめてみました。

共通点と注意点について

 両者に共通しているのが、ダッチプロトコルへの批判です。現在のジェンダー肯定医療の基になったのが、1980年代後半から1990年代初頭にかけてオランダのクリニックの研究者が始め、後にダッチプロトコルと呼ばれるようになった思春期ブロッカーを投与する医療実験です。これは被験者が55人しかおらず、長期的なフォローアップもされていないのに、急速に世界中に広まって、思春期ブロッカー、異性化ホルモン、性別適合手術という標準治療が成立します。これの基準になったのが、WPATHのSOC(Standards of Care: ケア基準)でした。これを、両者とも否定しているのです。

  • 実験室から流出して、暴走拡散した治療が標準になってしまったこと。
  • またその背後にLGBT活動家が存在し、ジェンダーアイデンティティ(性自認)を疑う ことはトランス恐怖症(トランスフォビア)・差別・ヘイトとされること。
  • いっさいの疑念は禁止 され、医療者がジェンダー肯定医療の方針に従わなければコンバージョンセラピー(転換治療)であると非難されること。
  • 親への殺し文句が「死んだ娘と、生きている息子のどちらが良いですか?」 という、ジェンダーアイデンティティ(性自認)を絶対肯定して、ジェンダー肯定医療をしなければ 子供が自殺する、という脅しであること。

    そのような現状が批判されています。

 どちらも、本来ならあって当然の徹底的な研究や事後調査抜きに、標準治療として普及してし まったことを主張していますが、WPATHファイルは医療倫理を軸に、The Cass Reviewは徹頭徹尾エビデンスの脆弱さを根拠にしています。

 WPATHファイルもThe Cass Reviewも、強力な文書ですが、万能ではありません。引用するときの注意点をあげておきます。

 WPATHファイルは、法的拘束力はありません。いわばウォーターゲート事件と同じで、純粋にマスコミの調査レポートです。 流出した内部コミュニケーションも、話者本人たちは危ない内容を喋っているという自覚は無かったと思います。ジェンダー肯定医療で各自が抱えている問題や疑問点を話し合っているだけですから。しかしそこに、未成年者が同意できないことを医師たちが自覚していたり、精神疾患を抱えた人たちから無理やり同意をとっていたり、かなりおかしなことが行われているのが読み取れます。

 WPATHファイルに対する批判は、事実に対するものはほとんどなくて、著者が宗教右翼とつながっている、などという言いがかりがほとんどです。しかし、最大の反論は無視です。米国保健相次官補のレイチェル・レヴィンは、本人がMtFトランスジェンダーですが、WPATHファイル流出二日後の記者会見で、ファイルの内容を完全に無視した記者会見をしました。ですので、マスメディアに広める必要があるのです。周知されれば、日本のGI学会(旧GID学会)も WPATHのSOC7を採用し続けることに躊躇することでしょう。

 JEGMAでは、日本語訳の出版を希望しており、現在、出版社と交渉中です。また、Environmental Progressに日本語訳PDFを渡しているので、向こうのサイトに掲載されるかもしれません。とにかく拡散が必要です。

 The Cass Review はNHSイングランドに向けた行政文書です。したがって、NHSイングランドにおいて一般診療での二次性徴抑制剤(思春期ブロッカー)の禁止を決めれば、それは拘束力があるのです。ただし、イングランド内だけです。しかし、ウェールズもスコットランドも、同じ方針をとりました。

 The Cass Reviewの最大の注意点は、二次性徴抑制剤(思春期ブロッカー)禁止の根拠はエビデンスの脆弱性に過ぎないということです。これから、研究プロトコル下で被験者に二次性徴抑制剤(思春期ブロッカー)を投与して、ジェンダー違和への治療的効果が証明されれば、その薬剤は肯定されます。
 The Cass Reviewは無視できないので、TRA活動家は恐慌状態です。二次性徴抑制剤(思春期ブロッカー)を使用してきた医療者は、安全で有効だという研究をあげていますが、判断するのは NHSなので、その主張は無意味です。

 The Cass Review成立の大きなきっかけは、タヴィストックGIDS(ジェンダーアイデンティティ発達サービス)のスキャンダルです。2010年代に思春期にジェンダー違和を発症した女性患者が急増し(50人→2000人)紹介された患者をさばききれなくなりました。それまでは少年の女性自認のジェンダー違和患者をじっくりカウンセリングして治療していたのに、カウンセリングを一度か 二度するだけで、二次性徴抑制剤(思春期ブロッカー)、異性化ホルモン治療に進ませました。その背景には、医療施設がLGBT活動家に乗っ取られて、ジェンダーアイデンティティ(性自認)を確かめるようなカウンセリングをすること自体が差別とされて失職の恐れがあったことです。

 タヴィストックGIDS自体は2023年に閉鎖されたのですが、The Cass Reviewで、ここを通過した9,000人の治療データを成人のジェンダークリニックに求めた結果、拒絶された、という経緯があります。これに保健大臣は文書開示命令を出して対処しました。英国の国家予算の四分の一がNHSに使われているそうです。そうすると、これは行政関係者にとっては悪夢のような事態でしょう。

 The Cass ReviewはWPATHファイルと違って、ものすごく退屈な行政文書なのですが、役人に周知すれば効果は抜群だと思います。
 JEGMAではThe Cass Reviewのサマリーまでの翻訳が終了しています。
 ご覧いただいた通り、ジェンダー医療はまだまだ発展途上の領域であり、正しい治療法は確立していません。そのため、ジェンダー肯定医療の事実をきちんと議論できる基盤を作ることは非常に重要であり、差別禁止法を作られるなどして議論を封じられることは本当に恐ろしいです。欧米で起こった悲劇は、LGBT活動家による圧力により、健全で建設的な議論が妨害されてしまったことが、主な要因となっています。
 日本でこの悲劇を繰り返さないためには、中央や地方の行政に、LGBT活動家の主張に懸念を抱かせることが重要です。
 以上を念頭に置き、WPATHファイルやThe Cass Reviewを効果的にご利用頂きたく願っております。WPATHファイルの本文、Cass Reviewのサマリーの翻訳は終わっていますので、どうぞご活用ください。

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