ジェンダー医療研究会:JEGMA

ジェンダー医療研究会は、 ジェンダー肯定医療に関して、エビデンスに基づいた情報を発信します。

医療的移行が良い結果をもたらすというエビデンスは限定的なものである

多くの異なる研究が、ジェンダー移行に関する質の高いエビデンスが不足していると指摘している。

オーストラリアの論文[1]では、ジェンダー再割り当てに関して肯定的な結果を示す利用可能な証拠のほとんどが、質が低いと述べている。

ドイツの研究 [2]では、「移行期にあるトランスジェンダー女性に対するホルモン治療アプローチの有効性や安全性を判断するエビデンスが不十分である」とし、次のように付け加えている。
「このような研究の欠如は、現在の臨床実践と臨床研究との間にギャップがあることを示している」 

NICE(National Institute for Health and Care Excellence:国立医療技術評価機構)が実施した英国のレビュー [3] では、思春期ブロッカーの使用に関するエビデンスの確実性が、ジェンダー違和(性別違和)、メンタルヘルス、ボディイメージ、全体的機能(global functioning)、心理社会的機能、認知機能、骨密度、有害な副作用への影響など全ての項目において「非常に低い」と評価された。

編著書の中のある章[4]では、英国のジェンダーアイデンティティ発達サービス(Gender Identity Development Service)で採用された治療経路のエビデンスベースの低さについて詳述しており、否定的なエビデンスがいかに「無視または抑制」されていたかを実証している。

最後に、世界トランスジェンダー健康専門家協会(WPATH)が委託した「トランスジェンダーの人々の心理的転帰に対するジェンダー肯定ホルモン療法の効果を系統的にレビュー」したシステマティック・レビュー[5] では、いくつかの領域で、質が低いか、エビデンスが不十分であることが指摘されている。

参照:

[1] D’Angelo, R. (2018). Psychiatry’s ethical involvement in gender-affirming care. Australasian Psychiatry 26 (5): 460-463. [Link]

[2] Haupt, C., Henke, M., Kutschmar, A., Hauser, B., Baldinger, S., Saenz, S.R. & Schreiber, G. (2020). Antiandrogen or estradiol treatment or both during hormone therapy in transitioning transgender women. Cochrane Database of Systematic Reviews 11. [Link]

[3] National Institute for Health and Care Excellence (2021). Evidence review: Gonadotrophin releasing hormone analogues for children and adolescents with gender dysphoria. National Institute for Health and Care Excellence (NICE); NHS England; NHS Improvement. [Link]

[4] Biggs, M. (2019). The Tavistock’s Experiment with Puberty Blockers. In: Moore, M. & Brunskell-Evans, H. (eds.). Inventing Transgender Children and Young People. Cambridge Scholars Publishing. [Link]

[5] Baker, K.E., Wilson, L.M., Sharma, R., Dukhanin, V., McArthur, K. & Robinson, K.A. (2021) Hormone Therapy, Mental Health, and Quality of Life Among Transgender People: A Systematic Review. Journal of the Endocrine Society 5 (4). [Link]

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