ジェンダー医療研究会:JEGMA

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ジェンダー違和(性別違和)のある思春期の若者の骨密度に対するGnRHアナログ治療の効果:大規模全国コホートからの知見

C-1-007

原文

Joseph, T., Ting, J., & Butler, G. (2019). 

The effect of GnRH analogue treatment on bone mineral density in young adolescents with gender dysphoria: findings from a large national cohort

Journal of Pediatric Endocrinology and Metabolism32(10), 1077–1081. 
https://doi.org/10.1515/jpem-2019-0046

抄録

背景

ジェンダー違和(性別違和:Gender Dysphoria:GD)を有する若年者の多くが、ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ(GnRHa)治療から始まるホルモン介入を受けている。骨密度への影響は不明であり、ガイドラインでは骨塩密度(BMD)をモニターすべきであると言及しているが、その時期については示唆されていない。

本研究の目的は、GnRHa治療中の骨塩密度(BMD)および骨塩見かけ密度(BMAD)に臨床的に有意な変化があるかどうかを調べるために、単一施設の思春期の若者のコホートを調査することである。

方法

GDの管理のために国立センターに紹介され(2011-2016年)、二重エネルギーX線吸収測定(DXA)スキャンを毎年受けた12-14歳の70人の被験者の後ろ向き評価。入手可能なデータからBMADスコアを算出した。

2つの解析が行われ、対象患者が2年間の治療期間にわたってスキャンを受けた完全な長期的解析(n=31)と、治療開始1年間の対象患者のより大規模なコホート分析(n=70)が、第二次性徴が抑制されたときの腰椎BMDの急速な変化の観察を目的に行われた。

結果

基本的に、トランス少年はトランス少女よりもBMD測定値が低かった。股関節と腰椎のBMDと腰椎BMADのZスコアに顕著な低下がみられたが、GnRHa投与1年後には股関節や脊椎のBMDや腰椎BMADの絶対値に有意な変化はみられず、長期的観察群におけるBMD/BMADのZスコアが2年目にさらに低下することもなかった。

結論:選択された患者コホートについて対象範囲を再定義する必要があると示唆される。性ホルモン治療による長期的なBMD回復の研究が求められる。

SEGMによる解説

本研究は、GnRHアゴニストに曝露された12~14歳のトランスジェンダーの思春期の若者の骨密度の経時的変化を調査した単一施設の後ろ向き的研究である。70人の被験者が基準開始時と12ヵ月目にDEXAスキャンを受けた。31人の被験者には24ヵ月後のデータがあった。BMDとBMADは変化しなかったが、Zスコアは顕著に減少した。

この研究は、ジェンダー違和のある10代の若者の第二次性徴抑制が、正常な骨密度の増加の停止と、その結果としての骨密度Zスコアの低下とに関連することを示している。

長所

被験者数が比較的多い。

限界

追跡期間が限定されている。DEXAスキャンに限定した解析。その後の異性化ホルモンの影響を評価していない。骨代謝の評価なし。