F-1-002
原文
de Vries, A. L. C., & Cohen-Kettenis, P. T. (2012).
Clinical management of gender dysphoria in children and adolescents : the Dutch approach.
Journal of Homosexuality, 59(3), 301–320.
https://doi.org/10.1080/00918369.2012.653300
抄録
ジェンダー違和(性別違和:gender dysphoria)を抱えた12歳未満の思春期前の児童と12歳以降の思春期の若者の臨床管理に関するオランダ・アプローチは、青少年の機能や環境における脆弱な側面を徹底的に評価し、必要に応じて適切な介入を行うことから始まる。ジェンダー違和(GD)のみの児童の場合、一般的に推奨されるのは、思春期の最初の段階でジェンダー違和がどのように進行するかを注意深く観察し、見守ることである。ジェンダー違和のある青少年は、16歳に達した時点で思春期抑制(puberty suppression)とそれに続く異性化ホルモン(cross-sex hormones)の対象となると考えられる。現在のところ、このようなケースで物理的な医学的介入を差し控えることは、物理的な医学的介入が行われたケースと比較した場合、思春期と成人期の両方における幸福感(wellbeing)にとってより有害であると考えられる。
SEGMによる解説
この研究では、思春期の青年をホルモンおよび外科的介入で治療するための「オランダ・プロトコル」について記述している。プロトコルの第1段階と第2段階である思春期遮断(puberty blockade)と異性化ホルモンは、思春期まで持続する小児期発症のジェンダー違和を有する10代の若者70人を対象にデザイン研究され、試験された。
著者らは、ホルモン介入を開始する前に、若いジェンダー違和患者を社会的に移行(socially transitioning)させないことの重要性を強調している。これには2つの要因がある:
1.ほとんどのジェンダー違和の児童では思春期の終わりまでジェンダー違和(GD)が持続しないので、将来的な脱トランスの結果起こりうる重大な精神的苦痛を防ぐため。
2. トランスであることを長期にわたって主張する少数派の児童が、生物学的現実をしっかりと把握し、ジェンダー再割り当て(gender reassignment)を構成する複数の侵襲的介入や生涯にわたる医学的治療計画に精神的に備えることができるようにする。
著者は、児童のジェンダー違和が寛解しない場合、養育者と児童が、介入の侵襲的性質について現実的な予想を持つことの重要性を強調している。
SEGMの平易な説明による結論
オランダ・プロトコルの著者は、思春期前および思春期早期の社会的移行を強く阻止するよう明確に示した。彼らは、社会的移行は、最終的にトランス自認をやめることになる大多数の子どもたちにとっても、最終的にジェンダー再割り当てを目指す少数派にとっても、有害であると主張した。オランダ・プロトコルから大きく逸脱して、欧米諸国では早期の社会的移行の実践が人気を集めている。