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WPATHファイル:インフォームド・コンセントの倫理/未成年者は性的特性変更処置に同意できない - p.37-38

インフォームド・コンセントの倫理
 医療におけるインフォームド・コンセント(情報理解による承諾)は、医療提供者が特定の処置や介入のリスク、利点、および代替案について患者を教育するプロセスです。患者には、処置や介入を受けるかどうかについて自発的な決定を下す能力がなければなりません(145) 。

 医療におけるインフォームド・コンセントの取得は、3つの主要な要素を含むプロセスです。第1に、病状の性質、提案された治療法、および利用可能なすべての代替案に関する正確で最新の情報の提供。第2に、患者の理解度、および該当する場合は、提示された情報に対する保護者の理解と、情報に基づいた医学的決定を下す能力の評価。第3に、インフォームド・コンセントを確認する署名を取得すること(146,147)。

 治療のあらゆる潜在的なリスクや、その効果を取り巻くあらゆる不確実性について議論することは、インフォームド・コンセントに不可欠です。これには、一般的なリスク、その医療行為に特有のリスク、治療を受けないことで起こりうる結果、代替治療の選択肢の検討について取り上げることが含まれます。

未成年者は性的特性変更処置に同意できない
 WPATHのメンバーは、未成年者が健康、生殖能力、および将来の性機能に生涯にわたる影響を与える可能性のある性的特性変更処置を理解し、経験的知識に基づいた同意を与えることができると信じています。ファイルの中で、テキサス州の医務部長は心配そうなセラピストに対して問題を抱えた13歳少女のテストステロン療法開始を許可するようアドバイスし、あるセラピストは10歳の少女に二次性徴抑制剤(思春期ブロッカー)の投与を始めることについて議論し、WPATHのバウワーズ会長は生得的男児が一生オーガズムを得られないままになっていることを公然と認め、ある外科医は未成年者に対して20件の膣形成術を行ったと報告しています。

 未成年者は、そのような医療に関連するリスクと彼らの幸福への長期的な影響を理解するための成熟度と認知能力を欠いています。さらに、性的な経験が限られているか、全くないため、自分が失うものの大きさを把握することは不可能です。リークされたパネルディスカッションは、WPATHのメンバーがこれを知っていることを証明しています。しかしWPATHは、未成年者(中には9歳ほどの幼い子どももいる)を、この取り返しのつかない医療の道に進ませるよう提唱し続けています。

 その完全な影響を理解できるはずがない未成年者に性的特性変更治療に同意させることを正当化する方策として、アイデンティティ・エボリューション・ワークショップのパネリストの何人かは、小児期に発症する糖尿病の治療との類似性を引き合いにだしました。

 「子供が糖尿病の薬を飲むとき、自分の膵臓のことや身体の中で起こっているあらゆることについて、全部を理解する必要があるでしょうか?」 バーグはパネリストたちに向かって大げさに尋ねました。 その後、グリーンは「糖尿病のような既知の疾患であれば、インフォームド・コンセントのために、インシュリンの効用についてすべてのニュアンスを理解する必要はありません」と述べました。

 しかし、この類推にはいくつかの理由で欠陥があります。糖尿病の診断を受けるためには、病気を確認するための生物学的検査があります。病気の原因は明白で、治療プロトコルはよく研究されており、インシュリンによる治療の結果は理解されており、治療しないことに伴うリスクは明らかです。実際、治療せずに放置すると、この病気は致命的です。 また、インスリン療法は生涯にわたる不妊をもたらすものではなく、若者の将来の性機能に影響を与えることもありません。これは、利益がリスクを大幅に上回るという確固たる科学的証拠を備えた治療法であり、インフォームド・コンセントのプロセスは明快です。

 しかし、二次性徴抑制剤(思春期ブロッカー)や異性化ホルモンを使って、思春期の青少年に自分の性別への不快感に対処させることについては、同じことは言えません。ジェンダー違和の診断を確認するための検査はありません。 むしろ、それは絶えず変化し、進化している若者の主観的な自己意識に基づいています。同様に、どの子どもや思春期の若者が大人になってもトランスジェンダーのアイデンティティを持ち続けるかを予測する方法はありません。また、この定義が曖昧な障害の治療薬としての二次性徴抑制剤(思春期ブロッカー)の使用を支持する質の高い科学的エビデンスもありません。また、利益がリスクを上回ることを示す長期的なアウトカムの研究もありません。実際には、それに反するエビデンスが積み重なってきてます。

 二次性徴抑制剤(思春期ブロッカー)と異性化ホルモンの組み合わせは、若い患者を生涯不妊にする可能性があり、これらの薬には、骨をもろくする、認知障害、がんや心血管疾患のリスクの高まりなど、多くの既知および予想される副作用が伴います。そもそも、それでジェンダー違和が解決できるかどうかも不確実です。

 さらに、思春期抑制実験が行われる以前のジェンダー医学の全研究は、ほとんどの子どもは、自認のジェンダーを肯定され社会的および医学的に移行することがなければ、思春期中または思春期後に移行を断念し、出生時の性別を受け入れることを示しています(148)。現在、小児ジェンダークリニックへの紹介の大半を占めている、近年出現した思春期に急激に発症するグループにおけるジェンダー違和の持続率に関する科学文献は現時点ではありません。しかし、思春期の心身の発達に関する既存の知識を基に考えると、彼らのトランスジェンダーのアイデンティティが成人期まで持続するかどうかは、大いに疑問です(149)。

 WPATHの専門家がジェンダー医療と糖尿病のインシュリン投与の、2つの治療プロトコルの違いを理解できないことは、この組織のメンバーが科学をしっかりと理解していないことのさらなる証拠です。

145) Shah, P., Thornton, I., Turrin, D., & Hipskind, JE. “Informed Consent.[Updated 2020 Aug 22].” StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing (2021). https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK430827/#:~:text=Introduction,undergo%20the%20procedure%20or%20intervention

146)  “Informed Consent.” AMA Code of Medical Ethics, https://code-medical-ethics.ama-assn.org/ethics-opinions/informed-consent

147)  Katz, A. L., and Webb, S. A. “Informed Consent in Decision-Making in Pediatric Practice.” [In eng]. Pediatrics 138, no. 2 (Aug 2016). https://doi.org/10.1542/peds.2016-1485

148) Cantor, J. M. (2016). Do trans- kids stay trans- when they grow up? http://www.sexologytoday.org/2016/01/do-trans-kids-stay-trans-when-they-grow_99.html 

149) Ibid (n.49); Ibid (n.50)

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