言葉(Language)
呼称(ラベル:Labels)は混乱を招く可能性があります;
若者(young people)は呼称を役に立つと思うこともあれば、汚名と感じることもあります。このテーマについて、どのような言葉を使うのが最適なのか、コンセンサス(同意)は得られていません。 この分野を取り巻く言葉も急速に変化しており、若者(young people)は自分自身に関連するさまざま な用語や構成要素を用いて、自分たちの経験を説明する多様な方法を発達させてきました。
このレビューでは、できる限り多様性を尊重し、その多様性を認める言葉や用語を使用するよう努めていますが、その行為はまた、我々が説明しようとしていることの複雑さを正確に描写するものでもあります。
使用されている用語を必ずしも正しいとは感じられない人もいるかもしれません:しかしながら、使用されている用語は本レビューが取っている立場を示すものではないことを強調しておくことが重要です。この章は用語集を含みます。主な定義は以下の通りです:
ジェンダー不合(性別不合:Gender incongruence)とは、国際疾病分類第11版(ICD-11)(世界保健機関、2022年)で使われている用語で、「個人が経験したジェンダー(an individual’s experienced gender)と、割り当てられた性別(the assigned sex)との間の顕著かつ持続的な不一致」を表します。 精神疾患として認識されないように、「精神および行動の障害:Mental and behavioural disorders」の章から「性的健康に関連する状態:Conditions related to sexual health」の章に移されています。この用語集には、気分変調や機能障害への言及は含まれていません。
ジェンダー違和(性別違和:Gender dysphoria)は「精神障害の診断と統計マニュアル第5版テキスト改訂版(DSM-5-TR)」(米国精神医学会、2022年)で使用されている用語です。 DSM-5-TRの定義では、ジェンダー不合は臨床的に重大な苦痛や機能障害と関連していなければなりません。 ジェンダー不合がある幼い児童(Younger children )は違和(dysphoria)を経験しないかもしれませんが、思春期に入ると一般的に違和が生じるか、増大します。
ジェンダー違和(性別違和:Gender dysphoria)は、臨床の場だけでなく、研究発表においてもより一般的に使用されている用語です。また、主流メディアやソーシャル・メディアで広く使用されているため、一般の人々にも馴染みのある言葉です。うつ病と同様、正式な診断名であると同時に、感情を表すために口語で使われる呼称でもあります。
本報告書(レビュー)では、思春期に一般的に発症または悪化し、若者がNHSに助けを求めるようになる感情を表すために、上記で定義したようにジェンダー不合(gender incongruence)、およびジェンダーに関連した苦痛(gender-related distress)という用語を使用しています。
思春期前の子どもたちを指す場合は「児童:child」、思春期を迎えた18歳未満を指す場合は「若者:young people」と表記しています。本報告書では、脳の発達段階を論じる際に「青年期:adolescents」とも表記しており、研究内容でこれらの用語を使用している場合は、「青年期:adolescents」と「青少年:youth」の両方を指します。 「若年成人:Young adults」は、18歳から30歳までの者を指します。
本報告書の執筆期間中、トランス(trans)という用語は、かなり狭い定義から、より広範なジェンダーの多様性(gender diversity)を包括する用語として適用されるようになりました。 本報告書では、「トランスジェンダー:trans gender」は二元的なトランスジェンダーの個人を、「ノンバイナリー:non-binary」は男性(male)か女性(female )かという伝統的なジェンダーの二元性を持たない個人を表しています。「ジェンダー非同調:gender non-conforming」という用語は、伝統的なジェンダー規範に適合することを選ばない個人を表すために使われ、「ジェンダー・クエスチョニング:gender-questioning」は、自分のジェンダー・アイデンティティを理解する過程である児童や若者を表す、より広い用語として使われます。「トランス:trans」という用語は、包括的な用語(the umbrella term)として使用されています。
また、本報告書全体を通して、患者(patient)や医療サービス利用者(service user)という用語も使用されています。これらは同じ意味で使われていますが、医療サービスを利用したことがあるが、もはやその医療サービスの患者ではないかもしれない場合には、医療サービス利用者としました。(訳注:service[サービス]単体では「医療機関」の意味を持ちませんが、Cass博士の報告書の性質と日本語での分かりやすさの両立を考慮して、ここでは「医療サービス」と翻訳します。)
本報告書には、他の多くの情報源からの引用も含まれています。 これらの引用は、この報告書が選ばないような言葉や用語が使われている可能性があると注意することが重要です。原則として、本報告書では引用された論文の言葉をそのまま使用しています。分かりやすくするために引用文献を翻案した場合は、その旨が示されています。
このレビューはイングランドのNHS(イギリス国民保健サービス)から依頼されたものであり、イングランドのNHSのために作成されたものですが、報告書全体を通してNHSE(イギリス国民保健サービス・イングランド)、NHS(イギリス国民保健サービス)、UK(英国)という用語を使用しています。 これは通常、議論されている論文や研究と一致させるためです。(訳注:英国内には、NHSスコットランド、NHSウェールズ NHC北アイルランドがあります。)
著者権
Cass Review
Independent Review of Gender Identity Services for Children and Young People
cass.review@nhs.net
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