キャス博士の報告書：患者コホートの理解　- p.26~

患者コホートの理解

30. 本報告書では、紹介件数の増加の理由と、なぜ出生登録が女性である人が思春期に不釣り合いに増加しているのか、そしてこのことが医療サービスに与える影響について検討しました。　

31. これは、以前の研究で調査されたコホートとは異なるものです。紹介患者の中には、メンタルヘルスの問題を伴う場合もあれば伴わない場合もある高度なニューロダイバーシティー（神経多様性：neurodiversity。訳注：自閉スペクトラム症ASDや注意欠陥多動性障害ADHD、学習障害LDなどの神経発達症を個性として扱う概念）の複雑な表出があり、一般集団よりも小児期に不遇な経験や保護観察を受ける児童を高い割合で認めました。紹介の増加とケースミックス（集団）の変化は、国際的にも見られています。

32. 誰がサービスにアクセスしているかを理解することは、適切な臨床的アプローチにつながります。したがって、完全な理解を得るために、本レビューではジェンダー不合（性別不合）やジェンダー違和（性別違和）の性質と原因について何が知られているかを調べました。これは、この領域における核心的な論争の核心に触れるものです。

33. 患者集団の変化の根底にある理由を検討したり、議論したりすることができなかったために、何が彼らのジェンダー経験や苦痛につながったのかについて理性的な議論がなされることなく、議論の中心となっている児童や若者にどう対応すべきかについて、人々が異なる立場をとることになりました。

34. ジェンダー不合（性別不合）は、他の多くの人間の特徴と同様に、生物学的、心理学的、社会的、文化的要因の組み合わせから生じるということについては、幅広い合意があります。

35. 一般的に言われているのは、（ジェンダー不合の）表明が増えたのは、より受け入れられるようになったからだという説明です。確かに、特に若い世代でトランスのアイデンティティがより広く受け入れられていることは事実のようであり、それが数の増加のいくらかは説明できるかもしれませんが、特に5年という短い期間で紹介者が指数関数的に変化していることは、マイノリティグループの受け入れの通常の進展から予測されるスピードよりも極端に速いです。これはまた、出生登録が男性の人が多かったものが、出生登録が女性の人が多くなるように変化したことを十分に説明するものでもなく、それ以前の時代におけるトランスジェンダーの状況とも異なります。

36. 児童や若者のジェンダーケアを考えるには、成人とは異なる問題があります。児童や若者は20代半ばまで続く発達の軌跡の上にあり、ジェンダー不合（性別不合）の決定要因について考える際には、このことを考慮する必要があります。ジェンダーアイデンティティの発達が思春期の発達の他の側面とどのように関連しているかを理解するためには、脳の発達と思春期の通常の課題を理解することが不可欠です。

37. この若者のグループは、NHSに助けを求める複雑な症状を持つより広い青少年のグループという文脈でも考慮されるべきです。過去10年間で、イギリス全土の児童や青少年における精神的健康問題の割合が大幅に増加しており、不安やうつ病の増加は10代の少女において最も顕著であり、他の身体的苦痛の症状、例えば摂食障害、チック症、身体醜形障害を呈する若者の増加もみられます。

38. 研究によると、ジェンダー表現は、生物学的素因、幼児期の経験、セクシュアリティ、思春期への期待など、さまざまな要因が絡み合って決定されると示唆されます。精神衛生上の問題を切り離すことが難しい人もいます。現代社会のさまざまな影響やストレス要因（オンライン経験を含む）の影響は、いまだ明らかではありません。思春期には仲間の影響も非常に強力であり、世代間の視点も異なります。

39. 現実的には、母集団で観察された変化に関する上記の説明は、多かれ少なかれすべて真実である可能性がありますが、どの個人にも、異なる要素の組み合わせが適用されます。

40. この集団は特異な集団であり、多くの場合、ジェンダーに関連した苦痛を超えた複雑なニーズを含む広範な症状を呈し、このことはNHSが彼らに提供するサービスに反映される必要があります。

41. この集団は、単一の原動力と最適な治療法がある均質な集団とみなされることが多いですが、これは状況を単純化しすぎています。ジェンダーに疑問を持っていたり、トランスのアイデンティティを持っていたりすることは、人によって意味が異なります。児童や若者のジェンダー・サービスに紹介される人の中には、医学的介入が有益な人もいれば、そうでない人もいます。臨床的アプローチはこれを反映しなければなりません。

42. この多層的な開発プロセスに取り組むには時間がかかります。臨床チームの役割は、若者が自分のジェンダーアイデンティティをよりよく理解し、利用可能な選択肢を評価できるように、若者がこれらの問題に取り組むのを助けることです。