ジェンダー医療研究会:JEGMA

ジェンダー医療研究会は、 ジェンダー肯定医療に関して、エビデンスに基づいた情報を発信します。

アメリカにおけるWPATHの影響

アメリカにおいて、WPATHがどのくらいの影響力を持っていたかについてのレポートを翻訳しました。影響は医学界はもちろん、政治や司法にも及びます。原文のPDFは以下のリンクから入手できます。

ファイル名:WPATH’s Influence in the US.pdf

drive.proton.me

以下翻訳

1.  主な医師会

米国医師会(AMA)

2019年 - ジェンダー違和のホルモン療法と外科的治療の保険適用を支持し、WPATHのSOC7(Standards of Care 7)を引用:
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退役軍人省に宛てた2018年の書簡の中で、AMAはWPATHのSOC7を引用し、WPATHを 「ジェンダー違和の理解と治療に専念する国際的、学際的な主要専門組織」と紹介している。
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2016年11月 AMA Journal of Ethics, Volume 18: Transgender Health and Medicine - 全文書を通してWPATHを引用 - オンデマンドでの身体改造を主張:
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米国小児科学会(AAP)

ジェンダー違和に悩む未成年者に対するホルモン療法や外科的介入を支持するAAP2018年方針声明は、WPATHのSOC7と2010年の「脱・精神病理学化」声明を引用している。 臨床の場をより包括的なものにする方法のセクションで、この方針は電子カルテに関するWPATHの論文を引用しており、生物学的性別ではなくジェンダーアイデンティティ(性自認)を記録するよう求めている(要確認)。

publications.aap.orgこの方針声明は2023年8月に再確認された。

米国精神医学会(APA)

2010年、WPATHの作業部会は、性同一性障害のDSM診断の改訂を勧告するためにコンセンサス・プロセスを実施した。 作業部会は、「診断名を性同一性障害(Gender Identity Disorder)から、より正確で病理学的でないジェンダー違和(Gender Dysphoria)に変更する」ことを提案した。 APAは2013年、DSM-5において性同一性障害をジェンダー違和に置き換えた。
この作業部会には、WPATHのSOC8のメンタルヘルスの章の主執筆者であり、WPATHファイルの報告書で名前が挙げられている著名なWPATHメンバーであるダン・カラシック博士が含まれていた。
🔎Recommendations for Revision of the DSM Diagnosis of Gender Identity Disorder in Adults

APAの『2017 Guide for Working With Transgender and Gender Nonconforming Patients(トランスジェンダーおよびジェンダーに非同調な患者への対応ガイド)』の『Medical Treatments and Surgical Interventions(内科的治療と外科的介入)』のセクションは、主にWPATHのSOC7に基づいている。

 www.psychiatry.org

2024年1月、APAは『Gender-Affirming Psychiatric Care(ジェンダーを肯定する精神科医療)』の初版を発行した。この教科書は、「トランスジェンダー、ノンバイナリー、および/またはジェンダー・エクスパンシブ(TNG)の人々をケアするための、肯定的で、交差的で、エビデンスに基づいたアプローチを提供する」ものである。 56名の著者のうち、50名がトランスジェンダーである。 二人の主編集者のうちの一人はWPATHのメンバーであり、56人の著者の多くもそうである。 この教科書は、イデオロギーに大きく傾斜し、科学的根拠に欠けるとして、すでに激しい批判を浴びている。

www.amazon.com

教科書の多くの欠陥を強調する2人の精神科医による論説。

www.dallasnews.com

米国心理学会(APA)

2008年 - トランスジェンダー、ジェンダーアイデンティティ(性自認)、性表現の差別禁止に関するAPAの決議では、「心理学者は、特に世界トランスジェンダーヘルス専門家協会(WPATH)が発表した『Standards of Care』の実施に関して、施設環境における方針と実践に影響を与える立場にある」と表明している。
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トランスジェンダー、ジェンダーアイデンティティ(性自認)、性表現に関する質問に答える2014年版パンフレットは、WPATHのSOCを推奨している。
🔎PDF

『2015 Guidelines for Psychological Practice With Transgender and Gender Nonconforming People(2015年トランスジェンダーおよびジェンダー不同調な人々の心理学的診療のためのガイドライン)』は、WPATHを引用し、「ゲートキーピング」に反対し、医学的移行に関する意思決定に肯定的なアプローチをとるよう助言している。
🔎PDF

『2021 APA RESOLUTION on Gender Identity Change Efforts (GICE)(2021年ジェンダーアイデンティティ変更の取り組みに関するAPA決議)』 - WPATHは、「ジェンダーアイデンティティの問題に取り組む際に、臨床医がジェンダーを肯定する実践を行うことを奨励する、経験的に裏付けられた実践ガイドラインを確立した」としている。
🔎PDF

内分泌学会

『The 2009 Endocrine Treatment of Transsexual Persons:An Endocrine Society Clinical Practice Guideline(2009年トランスセクシャルの内分泌治療:内分泌学会臨床実践ガイドライン)』 

2017年に更新された『Endocrine Treatment of Gender-Dysphoric/Gender-Incongruent Persons: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline(ジェンダー違和/ジェンダー不合の患者の内分泌治療: 内分泌学会の臨床実践ガイドライン)』

academic.oup.com

academic.oup.com
いずれも多数の著名なWPATHメンバーが執筆している。
WPATHは2009年版ガイドラインの共同スポンサーとして記載されており、2017年版ガイドラインでも引用されている。 どちらのガイドラインも、質の低いエビデンスに基づいて医療介入を推奨している。

 

米国産科婦人科学会(ACOG)

2021年の委員会意見書(2024年再確認か?)『Health Care for Transgender and Gender Diverse Individuals(トランスジェンダーとジェンダーに多様性のある人のための医療)』は、WPATHのSOC7を引用している。 「トランスジェンダーの思春期の若者の医学的・外科的ケアに関するガイダンス」としてWPATHを推奨し、WPATHの2010年の「脱精神病理学化」声明を引用し、WPATHのSOCを「トランスジェンダーの患者に関わる医療専門家にとって重要なリソース」と呼んでいる。

 www.acog.org

米国児童青年精神医学会(AACAP)

www.aacap.org

AACAPのウェブサイトは、WPATHのSOC8を推奨し、リンクしている。このガイドラインは、「エビデンスに基づき」、「ジェンダー違和を抱えた青少年にサービスを提供するさまざまな分野の人々にとって、最新のリソースとなるケアの基準 」と呼んでいる。

「転換療法」に関する2018年の方針は、WPATHのSOC7にリンクしている:

www.aacap.org

ジェンダーに悩みを抱える子どもや思春期の若者の治療に関する2012年「オフィシャル・アクション」:
🔎https://www.jaacap.org/article/S0890-8567(12)00500-X/fulltext#back-bib110 ーWPATH SOC6を引用

米国形成外科学会(ASPS)

2021年、ASPSはフェイスブックにオープンレターを送り、ソーシャル・メディア・プラットフォームに対し、外科医がジェンダーを肯定する手術の広告を出すことを認めるよう促した。 WPATHのメンバーであるキース・ブレックマン医師は、フェイスブックとインスタグラムが彼の診療所の広告をブロックしたことに腹を立てていた。 ASPSは書簡の最後に、フェイスブックのリーダーたちに対し、「米国の医療制度におけるジェンダー肯定医療の重要性と役割をよりよく理解する 」ために、WPATHの『Standards of Care』の出版物を読み直すよう促している。

www.plasticsurgery.org

2.  アメリカ政府

2022年4月、テキサス州で開催された「アウト・フォー・ヘルス会議」でレイチェル・レバイン保健次官補が行ったスピーチの一部:

「ジェンダー肯定医療は医療です。 それはメンタルヘルスケアです。 自殺予防の医療です。 それは生活の質を向上させ、命を救います。それは何十年にもわたる研究に基づいています。それはしっかり確立された医療行為です。世界トランスジェンダー・ヘルス専門家協会は、10年以上前の2011年にエビデンスに基づいたケアの基準を発表し、今年、完全な最新版を発表する予定です。 WPATHは、政治的な主張をするために、一部の報告だけを抜き出した報告書に頼るのではなく、科学の全状況を評価し、トランスジェンダーやジェンダー・ノンバイナリーである患者をどのようにケアするのが最善かについて、実質的で、厳密に分析され、査読された勧告を医療界に提供しています。 彼らのアプローチに一方的なものはありません。 膨大な医学文献に基づいています。医学的な決定が科学的な情報に基づいたものであることを保証すること以外には、いかなる意図もありません。 これが本来の医療のあり方であり、医師が患者をケアする方法なのです」

レヴィンはWPATHのメンバーであり、2022年9月にモントリオールで開催されたWPATHの国際シンポジウムで基調講演を行い、「ジェンダーを肯定医療は医療です。 ジェンダー肯定医療はメンタルヘルスケアです。 簡単に言えば、ジェンダー肯定医療は自殺予防のケアなのです」という格言を繰り返した。

thepostmillennial.com

2023年8月、保健福祉省のOffice of Population Affairsは、子どもや思春期の若者に対する"早期のジェンダー肯定医療"を、「子どもや青少年が社会的移行に集中でき、医療制度を利用しながら自信を高めることができるため、全体的な健康と幸福(well-being)にとって極めて重要である 」と呼んだ。 この声明はWPATHのSOC8にリンクしている。
🔎 PDF

保健福祉省の一部門である物質乱用・精神保健サービス局(SAMHSA)は、以下のような報告書を作成した。
『Moving Beyond Change Efforts:Evidence and Action to Support and Affirm LGBTQI+ Youth(変革の努力を超えて: LGBTQI+の若者を支援し肯定するためのエビデンスと行動)』
🔎 PDF

 

3.  未成年者のジェンダー肯定医療をめぐる立法闘争におけるWPATHの影響力

現在進行中の裁判は非常に多く、そのすべてを列挙するには時間がかかりすぎる。 主なポイントは、WPATHが法廷闘争で大きな役割を果たしていることである。その『Standards of Care』はエビデンスに基づき、利用可能な最善の科学として提示され、WPATHのメンバーは専門家の証人として頻繁に呼ばれる。

興味深い判決

Dekker 対 Weida のフロリダ州メディケイド判決で、ヒンクル判事はWPATHのSOC8を 「ジェンダー違和治療のための確立されたケア基準 」と呼び、「よく訓練された臨床医が広く従っている 」と述べた。
ヒンクル氏はさらに、WPATHのSOCは保険会社によって使用されており、「米国保健福祉省によって承認されている 」と述べた。
🔎 PDF

Brandt 対 Rutledge裁判において、ジェイ・ムーディ判事はアーカンソー州による未成年者へのジェンダー肯定医療禁止令を阻止する恒久的差し止め命令を下した。 差し止め命令の中で、ムーディー判事はWPATHのSOC8を「ジェンダー違和の治療に関する広く認められた臨床実践ガイドライン」としている。 ムーディ判事は、WPATHを「トランスジェンダーの健康に関する著名なエキスパートで構成される委員会を通じて治療勧告を策定する専門家団体」と説明し、判決文の至るところでWPATHのメンバーであるダン・カラシック医師の専門家証言を引用している。 カラシックは、WPATHファイルの報告書にWPATHのメンバーとして名を連ねている。
🔎PDF

アラバマ州 - 同州による未成年者へのジェンダー肯定医療禁止令を阻止しようとする試みにおいて、WPATHのガイドラインがゴールド・スタンダードとして繰り返し引用された後、連邦地方裁判所のライレス・バーク判事は、WPATHのジェンダー違和のある青少年を治療するためのガイドラインに関する様々な文書を求めて、WPATHに召喚状を発行した。 WPATHは召喚状を取り消そうとしたが、それは失敗に終わった。
🔎PDF

1819news.com

ネブラスカ州

・立法闘争におけるWPATH専門家証人

カラシックは、以下のような数多くの訴訟で専門家証人として呼ばれている:

・Dekker v Marstiller 🔎PDF

・Doe v Lapado 🔎PDF

・Olson-Kennedy (ファイルの中でも挙げている):

・Dekker v Marstiller 🔎PDF

 

4. WPATHを引用している病院の一例 - 米国ではほとんどのジェンダークリニックがWPATHに従っている

ボストン小児病院はWPATHを患者リソースに掲載し、SOC8にリンクしている。

www.childrenshospital.org

シアトル小児病院は、「トランスジェンダーやジェンダーに多様性のある青少年が、生命を救うジェンダー肯定医療を受けられるようにする」ための医療提供者向けリソースを提供しており、WPATHのSOC8にリンクしている。

www.seattlechildrens.org

オレゴン健康科学大学のジェンダークリニックはWPATHのSOC8に従う。

www.ohsu.edu

ミネソタ小児科ジェンダークリニックのメディカル・ディレクターであるアンジェラ・ケイド・ゲプファード医師は、WPATHのメンバーである。

doctors.childrensmn.org

5. オンラインクリニック/家族計画連盟

米国最大のホルモン剤オンライン販売会社であるPlume社は、インターネットによるホルモン剤処方のアプローチの正当化として、WPATHがSOC7で「治療のインフォームド・コンセント・モデル」を支持したことを挙げている。

support.getplume.co

家族計画連盟は、事前のメンタルヘルス評価や心理的サポートなしに、多くの場合初診時にホルモン剤を処方しているが、「ホルモン療法の基準は、WPATHの『Standards of Care』を含む、トランスジェンダーおよびノンバイナリーケア提供のためのいくつかの卓越したセンターによって設定されたガイドラインを反映している」と述べている。

www.plannedparenthood.org

QueerDoc(少々不正確)

ウェブサイトはSOC8にリンクしている。WPATHファイルのレポートで紹介された元WPATH会長のジャミソン・グリーンは、2023年12月にオンラインでホルモン剤を販売している会社のインタビューを受けた。

queerdoc.com

 

6.  非営利団体

ヒューマン・ライツ・キャンペーン

WPATHのSOC7へのリンク

www.thehrcfoundation.org

GLAAD

GLAADは2024年1月、「トランスジェンダーの人々と青少年のためのエビデンスに基づく医療」に関するファクトシートで、WPATHのSOC8は「最善のケアに関する科学的および医療専門家のコンセンサス」を提供すると述べている。

glaad.org

ACLU

『the ACLU’s 2013 Protecting the Rights of Transgender Parents and their Children: A Guide for Parents and Lawyers(ACLUの2013年版トランスジェンダーの親とその子供の権利を守る:親と弁護士のためのガイド)』の中で、WPATHのSOC7が引用されている。
ACLUによると、「ジェンダー違和の治療は、世界トランスジェンダー・ヘルス専門家協会が定めた『Standards of Care』によって導かれる。 これらのガイドラインは国際的に受け入れられており、この症状の治療に関する専門家のコンセンサスを反映している」
🔎PDF

「世界トランスジェンダー・ヘルス専門家協会 と呼ばれる超党派の医療団体による、ジェンダー肯定医療の極めて厳格な基準がすでに存在する。 WPATHの『Standards of Care』は、アメリカ医師会を含む、世界のほぼすべての主要な医療機関で採用されている」

www.aclu-ky.org


7.  電子カルテ

2011年9月、WPATH執行委員会は、トランスジェンダー患者に関するEHRシステムの開発者、ベンダー、利用者への提言を行うため、専門家である臨床医と医療情報技術の専門家で構成される電子医療記録ワーキンググループを招集した。 提言には、患者のジェンダーアイデンティティ(性自認)を記録すること、臓器目録を作成することなどが含まれた。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

WPATHの影響により、医療記録は混乱し、不正確なものとなり、人々の生命を危険にさらしている。

www.fairforall.org

著作権 Environmental Progress

連絡先

・米国内のメディアからのお問い合わせ:press@jdaworldwide.com
・米国外のメディアからのお問い合わせ:press@sex-matters.org

・著作者:The WPATH Files — Environmental Progress